総評
出題者から皆様へ
今回のような少し易しい課題になると最優秀者が続出するかというと、どうもそうではないようです。
その理由は、日本の学校英語と翻訳が要求する英語のベースが異なっていることによるものと思われます。要するに、日本の学校英語は翻訳が要求する英語の「基本的な条件」を満たしていないことから生じているのです。
最近、文科省は2020年を目途にセンター試験を廃止して新テストに移行しようとしています。その最大の理由は、私が常々述べてきたように一つは、グローバル化によって暗記問題から思考問題へ移行せざるを得なくなったこと、もう一つはこれまでの暗記型英語を否定して実践的な英語力を問う問題に変更せざるを得なくなったことです。
ようやくにして文科省も日本の教育内容の時代遅れの現実に少しばかり気づきつつあるのかなという思いですが、本来儒教と仏教文化をベースにした日本人の暗記的な思考がそう容易く変えられるものではありません。
その意味で、この翻訳コンテストの企画は文科省の先取りを行くものであって、読者の皆さん方には大いに利用してもらい、是非とも21世紀が求める真の英語力を身に着けてもらいたいと切に思います。
----------------------------------
さて、シリーズの「構造論と機能論」について考えてみましょう。
前回において、「結論として、先ほど述べたように5文型説は「3文型説」に至る過渡期にある形態ではないかと私は推測しているのです。次回は、なぞそう思うのかについてもっと明確に「構造式」を用いて説明したいと思います。」と述べましたが、あまりに専門的になるのでこの場ではその説明を一旦傍らに置くことにします。
そこで、なぜ私が5文型説は3文型説の過渡期と捉えるのか、一体そのメリットはどこにあるのかについて簡単に述べたいと思います。
前者についてですが、「5文型説は3文型説の過渡期」と捉えましたが、むしろ「3文型説への過渡期ではなく3文型説を前提とした変化形態(変化文型)」と呼ぶ方が適切に思います。
ということは、結果として5文型説は3文型説の変化形であることから、「英語の基本文型」にはならないということになるのです。これが私の言う「3文型説」の考え方なのです。
この見解に立つと、例えば前回に取り上げた目的格補語を「不定詞形」にした5文型の場合に、この一つの短文の中に「2つのnexus関係と2つのA = Bの関数関係」が併存し、それを処理するために「優先劣後の法則や主従関係の法則」を持ち出す必要がなくなり、あくまでも「1つのnexus関係と1つのA = Bの関数関係」が認められることになり、結果として英文の単純な構造をつかむことができるのです。
この理論のプロセスを、前回「構造式」によって証明すると言いましたが、専門的であるために拙著「実践から学ぶ~」もしくは「英文の構造式考」(未刊行)の中で明らかにしておりますのでご覧ください。
もう一つ、後者については次回に回したいと思います。
さて、この「構造論と機能論」のシリーズも最終段階に入ってきました。でんしゃ理論におけるこの「構造論と機能論」の内容は、①文頭語法、②動詞語法、③接続語法から構成されていて、このシリーズはそのうちでもっとも重要な②「動詞語法」について述べたものです。
従って、さらに文頭語法や接続語法、さらには「文章の構成法」がありますが、これらについては上記した拙著に譲りたいと思います。
一応、このシリーズは次回で終了となります。
また、新たなテーマを取り上げたいと思っています。
ご期待ください。