総評
出題者から皆様へ
訳出法における「文章の構成」という問題については、前回の第176回においても触れていますが、この問題は日本の英語教育の中で全く触れられていないために、受講生には理解が難しい問題となっているようです。
今回のテーマもこの「英文の文章構成」です。「解説ページ」で相当詳しく説明したのですが、それをしっかりと読んで、さらにその理論を私の訳例で確認してもらいたいと思います。
この問題は、あまりにも重要であるために今後とも機会あるごとにわかりやすく解説するように努めたいと思います。
ともあれ、ほとんどの応募者の答案を見ると、まだ翻訳の初期段階である「分析ー訳出」の段階にあります。この段階をマスターするための詳細については、毎回「解説ページ」の中で一つのテーマを取り上げて詳しく説明していますので、しっかりと学習してください。また、時間に余裕のある方は、拙著「実践から学ぶ~」の中で明らかにしている「でんしゃ理論(構造論・機能論)」を購入して学習してください。
----------------------------------
さて、シリーズの「構造論と機能論」について考えてみましょう。
前回は、5文型説を前提としてしかもその目的格補語を「不定詞形」にした場合の構造論と機能論について説明しました。
そして、その文型を機能論的に分析すると、一つの短文の中に2つの「nexusの法則とA = Bの関数の合体」が認められることになり、これを概念的に一つにまとめることができるか?というのが今回のテーマだったのです。
一つにまとめるという必要性は、たとえ機能論的に2つの「nexusの法則とA = Bの関数の合体」が認められるとしても、あくまでもone sentenceかつone clause 内の問題であるからです。
ということになると、一文の中に機能論的に2つの文章構造が入っていることが2文(2つの節)を意味するのではなく1文(1つの節)を意味することであるとすれば、当然のことながら1文(1つの節)内の文章構造双方の間に優劣関係もしくは主従関係がなければなりません。
ということは、優劣関係にせよ主従関係にせよ2つの文章構造についての判定基準となるものは何か?ということになります。
それこそが「本動詞」なのです。
5文型説は第5文型の本動詞を「不完全他動詞」と呼び、その不完全他動詞に立って直後の名詞を目的語、さらに目的語の背後にある不定詞を目的格補語として捉えているのです。
つまり、本動詞の背後にある目的語と目的格補語は、あくまでもそれぞれが独立した存在であり、しかも目的語と目的格補語は本動詞自らの構造的機能の働きによって配置された要素であるから、たとえ目的語と目的格補語相互に一つの文構造である「nexusの法則とA = Bの関数の合体」が認められるとしても、本動詞とその主語とのnexus関係には劣る(従たる地位にある)というものです。
このような説明は、一般的にすべての英文において一律に矛盾なく適用することができると思われるけれども、私にはどうしても未完結の理論のように思われて仕方がないのです。
というのは、一つはそもそもなぜ一つの短文の中に2つの「nexusの法則とA = Bの関数の合体」が認められるのか。確かに、動詞の変形を文中に用いると自ずとその前後の箇所に一つの「nexusの法則とA = Bの関数の合体」が現れることにはなるけれども・・・。もう一つは、それと関係しているけれども、目的格補語を意味上の述語と捉えることができるのは当然であるが、それが「不定詞形」の文要素としてはどうしても不自然な形に思えるのです。
やはり、本動詞が文要素として配置したというからには、本動詞との関係でその形が文要素として直接的に認められるような配置及び補語としての形態になければならないのではないか、と思っているのです。
結論として、先ほど述べたように5文型説は「3文型説」に至る過渡期にある形態ではないかと私は推測しているのです。
次回は、なぞそう思うのかについてもっと明確に「構造式」を用いて説明したいと思います。
ご期待ください。